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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1927号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人伊藤正雄提出上告趣意第一點について。

記録を檢するに昭和二三年七月一三日の原審第二回公判調書に依れば、檢事より證人として西野清太郎の喚問申請ありたること、當日その採否は留保となりたること、次で同年十月五日の第四回公判調書に依れば「裁判長は檢事申請の證人西野清太郎を却下し事実並に證據調濟の旨を告げた」との各記載があって、右却下の宣告が評議(原審合議體裁判所裁判官の合議)の結果であること並びに決定(決定に依る裁判)に據るものである旨の調書の記載のないことは所論指摘のとおりである。然し裁判の評議の事実は公判調書の必要記載事項でなく、又證據調の請求却下は決定を以って爲されるべきものであることは、舊刑訴法第三四四條第一項の規定するところであるから、右公判調書の「却下」との記載は裁判長獨自の命令等、要するに合議體である原審裁判所の決定による裁判によったものでないことが調書上明らかでない限り、決定に據る却下の宣告であると解するを自然の道理にかなった解釋の仕方であると謂わなければならない。從って所論の如く公判調書に合議の事実の記載のないこと並びに決定によった旨の記載のないことを以って、右は原審裁判所の裁判長が合議を經ずに裁判長の獨斷を以って請求を却下したものと解するの外はないとの主張は獨斷の論たるを免れない。論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

以上の理由により、刑訴施行法第二條並びに舊刑訴法第四四六條に從い、主文のとおり判決する。

此判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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